YAMAHA PACIFICA 611と612徹底比較|万能モデル vs 個性派P-90、あなたに最適なのはどっち?
先日、某ショッピングモール内の楽器屋さんを何の気なしに覗いていたところ、ピックアップに「Seymour Duncan」の文字が。これまでなら全く気にも留めてなかったのですが、最近レスポールのハムバッカー交換を考えて色々聞き比べてたので思わず目が行きました。なんのギターかと見てみるとなんとヤマハのギター。「おいおい冗談だろ!?天下のきっちりしたものづくりのヤマハがこんな暴れん坊のピックアップつけるのかい?」なんて思うとか思わないとか。で調べてみたところ、しっかりダンカンのピックアップが乗ってます。全部のPACIFICAに載っているわけではなく、600番台の7~8万円クラスのギターに乗るようです。そんなPACIFICAシリーズを見ていくと、「実戦で使えるクオリティ」と「手の届きやすい価格」を両立した名シリーズでした。。その中でも上位機種として人気の PACIFICA 612VIIFM と PACIFICA 611VFM は、一見似ているようで設計思想がまったく異なります。
この記事では、両モデルの仕様・パーツ構成・音の違いを詳細に比較し、あなたにとってどちらがベストな選択肢かを明確にしていきます。
🎸 PACIFICA 612VIIFM|SSH+ハイパーツの現代的オールラウンダー
まずこちらの612モデル。よくあるロックギターのなりをしております。シングルピックアップ2発にハムバッカー1発の王道ロックストラトタイプ。ただし前述のようにピックアップはセイモアダンカンという超実用的な仕様。

🔧 主な仕様とパーツ構成
- ボディ材:アルダー(中音域に優れたトーンバランス)
- トップ材:フレイムメイプル(高域の明瞭さ+美しいルックス)
- ネック:メイプル(反応が良く立ち上がりが早い)
- 指板:ローズウッド(中低音が温かくサステイン豊か)
- ピックアップ構成:SSH(セイモアダンカン SSL-1 ×2 + TB-14)
- ブリッジ:Wilkinson VS50 2点支持トレモロ(滑らかなアーミング+チューニング安定性)
- ペグ:ロッキングチューナー(素早く正確なチューニングが可能)
🎧 サウンドの傾向
クリーン〜クランチではフロント&センターのSSL-1が立体感のあるシングルサウンドを出力。リアのTB-14 Custom 5は、ウォームで太く、ハイゲインでも音の芯が崩れません。SSH構成により、ポップスからハードロックまで幅広く対応可能です。作りが良くてもピックアップがいまいちだと結局交換することになりかねないので、最初からこの構成で組み込まれているのはうれしい限り。
✅ こんな人におすすめ
- 1本でさまざまなジャンルを弾きたい人
- クリーンも歪みも妥協したくない人
- アーム操作を使って表現したい人
- ライブでも宅録でも即戦力になるギターを求めている人
🎸 PACIFICA 611VFM|P-90×ハムの個性派サウンド+ハードテイルで安定性抜群
それでもう一個、シングルピックアップは使わないって方にはこちらの一本。JAZZ SH-2とCUSTOM5 SH-14で考えていた私的にはこちらが本命でしょうか。

🔧 主な仕様とパーツ構成
- ボディ材:アルダー
- トップ材:フレイムメイプル(高級感のある見た目)
- ネック:メイプル
- 指板:ローズウッド
- ピックアップ構成:フロント:Seymour Duncan SP90-1(P-90)
リア:TB-14 Custom 5(ハムバッカー) - ブリッジ:Wilkinson HT100(ハードテイル:弦振動の伝達効率が高く、サスティン良好)
- ペグ:ロッキングチューナー
🎧 サウンドの傾向
フロントP-90は、シングルとハムの中間のような太く暴れたトーンが特徴。空気感のあるクリーン、少しザラついたクランチ、強く弾けば荒々しい表情を見せてくれます。リアは612と同じTB-14で、重厚でパワフルなリードが可能。トレモロ非搭載により、弦振動がより直接的にボディへ伝わるため、サウンドが太く伸びやかになります。ブリッジがハードテイルというのもアームを使わない方にはぜひおすすめしたいところ。
✅ こんな人におすすめ
- クリーンやクランチでニュアンスをしっかり出したい人
- ビンテージ感ある荒めのサウンドが好みな人
- アームを使わずピッキングで勝負したい人
- ストラトやレスポールとは違う個性を求めている人
📊 スペック比較まとめ
| モデル名 | PACIFICA 612VIIFM | PACIFICA 611VFM |
|---|---|---|
| ピックアップ構成 | SSH(SSL-1 ×2, TB-14) | P-90+TB-14 |
| フロントPU | セイモア・ダンカン SSL-1(シングル) | セイモア・ダンカン SP90-1(P-90) |
| ブリッジ | Wilkinson VS50(2点トレモロ) | Wilkinson HT100(ハードテイル) |
| ジャンル対応力 | 万能、ポップス〜ロック全般 | ブルース、ロック、オルタナ、ジャズ |
| 見た目 | シャープでモダン、高級感あり | クラシカルでビンテージ感強め |
🔚 まとめ|万能な612か、味のある611か?
PACIFICA 612VIIFMは、「これ1本で何でもできるギター」を求めるプレイヤーに最適。ライブ、宅録、セッションなどあらゆる場面で活躍できるオールラウンドモデルです。 一方PACIFICA 611VFMは、「P-90の味わい深さ」や「弾き手のニュアンスを素直に出せるギター」が欲しい人におすすめ。より個性やプレイヤーの色が出る、育てがいのあるモデルと言えます。
いずれも10万円前後という価格帯とは思えないほど高品質なギター。音の傾向・構造・弾き方のスタイルから、あなたに合った1本を選んでみてください。
✨ ただ、完成度の高さが“ロマン”を遠ざける?
PACIFICA 611,612は、間違いなく“完成された1本”です。しかし一方で、「どこかロマンを感じにくい」と感じるプレイヤーも少なくありません。やはりMADE IN USAやあまたの有名ミュージシャンが使っているモデルに憧れを抱くのはよくわかる話です。そのため私も国産のギターブランドにはこれまで目を向けていませんでしたから。
もうひとつロマンを感じにくいのは、すでに最適解に近い状態で完成されているからこそ。
改造の余地も少なく、荒削りな“素材感”も希薄。
ヴィンテージのような経年変化や、「このギターじゃないと出せないクセのある音」──そうした“物語”を求めるプレイヤーには、やや物足りなさを感じさせるかもしれません。
💭 それでも「最初の1本」に、そして「一生モノ」として
とはいえ、PACIFICA 612はただの入門機ではありません。
SSH構成、セイモアダンカンPU、ロッキングチューナー、Wilkinsonブリッジ。これらの装備は、“迷いなく音楽に集中できる道具”としての信頼性を持っています。
楽器に“育てる喜び”を求める人にはロマンが足りないかもしれませんが、“音楽を楽しむための最高の道具”として、非常に優れた選択肢であることに変わりはありません。


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